
ワインのグラス選び
共有
ワインには様々な種類があります。産地や品種による味わいの違いはワインを深く知れば知るほど広がっていき、その魅力にとりつかれてゆくのです。そのとき私達の味覚で感じることのできる違いを最大限に表現できるもの、それはグラスです。
白ワインよりも赤ワインは少し大ぶりのグラスを使用したほうがよいということは、みなさんもご存知のとおりですが、これはどうしてでしょうか。 まず白ワインは生き生きとした酸味とフレッシュさを味わうものですから口の広がった大きなグラスよりは、先がすぼまっていて少しスマートなチューリップ型のグラスが適しています。 また、大抵の赤ワインには(気軽に飲むことのできるデイリーなワインからフルボディタイプまで)、凝縮した果実味や複雑なブーケやアロマ(香り)を感じることができ、その香りをたっぷりと嗅ぐことのできるグラス、すなわちボールの部分はゆったりとボリュームがあり、先が少しすぼまっているものがよいのです。
グラスの大きさは味わいに微妙な変化をもたらしますが、もっと重要なことは舌のどこの部分にワインが落ちていくかということです。 人間の舌はその場所によって感じる味覚が違います。人間が感じる味覚は4つの刺激によって区別されており、舌の先端は甘味、両脇は塩味、酸味はその内側、苦味や渋みは舌の付け根で感じます。グラスのふちの形状やカーブによって液体の流れるポイントが変わりますので、私達は液体を口に含んだとき最初に感じる味覚から舌全体に広がる変化により味を感知しているといえます。このことにもっとも早く注目して、何種類ものグラスの形状をつくったのがオーストリアのクラウス・ヨーゼフ・リーデル(現リーデル社)です。
またリーデルは、この味覚を感じるポイントにワインに使われるブドウ品種の味わいの特性をプラスして、品種ごとすなわちワインの種類ごとに違うグラスをつくったのです。 発表された1961年当時、このリーデルグラスの誕生は業界内に大きな衝撃を与えました。1973年にソムリエシリーズとしてハンドメイドのワイン用グラスが大々的に発表されましたが、以来、ワインメーカー、ワインテイスター、ソムリエなどのエキスパート達に絶大なる信頼を得ているのです。 もうひとつ、味わいの他にワインにとって重要なものそれは香りです。ワインの特性は香りだけで60%以上判別できるといわれているほどで、コンクールに出場するソムリエはワインの香りの表現には特に気を遣います。
香りの特性についてコメントをするときがワインをもっともエレガントに表現するといっても過言ではありません。そういったわけでグラスの中でいかに香りを集中できるかといったことが大切なポイントなのです。 香りを最大限に嗅ぐためには、グラスのふちまでなみなみとワインを入れてはいけません。ワインの香りは空気にふれることにより私達の臭覚を最大限に刺激しますので、できるだけグラスの中でたっぷりと空気に触れあうことがよいのです。
そのためには小さなグラスにワインを入れるのではなく大きめのグラスで、できればワインはグラスの1/3位までにとどめておき残った部分はあけておきます。私はこの部分を「香りの小部屋」と呼んでいます。 白ワイン、赤ワインともにさまざまなワインの特性がありますのでその味わいや香りをもっとも引き立たせるグラスがベストです。 ワインの中でもっとも華やかなものそれはシャンパーニュでしょう。
少し前まではクープ型と呼ばれるシャンパーニュ・グラスが主流で、パーティー会場などでも多く見られました。もともとは王妃マリー・アントワネットの乳房の形からとったものだと言われています。この形は大勢のお客様のために短時間で注ぐには便利ですが、あまりシャンパーニュが入らないばかりか、香りをかぐこともできないほどに浅く、またシャンパーニュの命である泡筋を消してしまいます。
できればフルート型と呼ばれる縦長のシャンパーニュグラスが望ましいですね。 これ以外でワインを美味しく飲むために敬遠したいグラスは、色付きのものや陶器などでできたもの、またはレースのようにカット模様を施した小さなグラスです。こういったワイングラスはワインの素敵な色合いを楽しむことができません。
ワインの持つ魅力のすべてを楽しむことのできるグラスというなら、まず、ワインを入れるボールの部分が無色透明であること、そしてしかるべきワインの量を入れても縁までいっぱいにならないで十分な大きさを持っていること、そして縁は外側に開いているのではなく内側にすぼまったグラスがよろしいでしょう。脚の部分は長く細いグラスの方がエレガントです。